浦島たろこさんは虐待サバイバー

妊娠出産を機に自分が虐待されていたことに気付き、うつ病になってしまった二児の母です。過去のトラウマとうまく付き合っていくために、自分の素直な気持ちや日常を綴ります。

正論じゃ人は救えない


半年くらい前までは、もう本当に死んじゃおうかなと思っていましたが、その頃に比べると今は大分マシになってきています。


その理由の一つが、運良く相性のいい主治医と出会えたことだと考えています。



昨年秋にかかった心療内科との相性は最悪でした。


昨年の夏から、私はこんな症状に苦しめられていました。



・一日中、虐待の記憶が頭を駆け巡っている

・息子と過去の自分を混同してしまう

・母と自分を混同し、母にされた暴力を自分が息子にしたものだと思い込んでしまう

・食事や休憩がとれない



みんなそうなの?私だけなの?

子育て相談窓口や虐待に関する相談ダイヤルに何度か電話をしましたが、「お母さん頑張ってますよ!」とあしらわれたり、電話口の向こうで明らかに困っている様子が伺えて、電話を切ってしまいました。


そこで、最後の頼みの綱として心療内科に行きました。


問診票には過去の虐待のことや、育児に困難を感じていることを書きました。


医師は開口一番言いました。



「で、ここに来るに至るまで何か努力ってされてたんですか?」



ショックでした。努力って何?努力してない人は病院に来ちゃいけないの?って思いました。



「来年春にお子さんが幼稚園に行くまでの我慢じゃないですか」

「お子さんかわいいんですよね?だったら叩きたい衝動も抑えられるでしょう」

「過去は変えられないだから、クヨクヨ考えてもしょうがないです」



私ってそんなに癇に触るのかな?って思うほど、診察のたびに厳しいことを言われ、「私は医者すら辟易するほど駄目な人間なんだ」とますます落ち込んでいきました。


通院は2ヶ月ほどでやめてしまいました。


そして約半年前、息子を保育園に送った帰りにフラフラと立ち寄ったのが今の心療内科です。



今の主治医を信用できるようになったのは、ある出来事からでした。



息子は夜驚症です。

朝まで寝るということはまずなく、泣き叫び手が付けられないことも多いです。

一度、カッとなって息子を叩いてしまったことがあります。


夫が飛び起きて怒り、私も「とうとう自分は親と同じ道に堕ちたのだ」と絶望し、パニックになりました。


主治医には叱られるのを覚悟でそれを話しました。

すると主治医の言葉はこうでした。



「君は何にも悪くない。いつも君ばっかり責められて悔しいなぁ!」



拍子抜けしてしまいました。

他にも主治医は叩いたことを肯定するようなことを言い、私は「この人大丈夫?」と呆れましたが、びっくりするほど心が落ち着いたのです。


その結果、短時間の勤務ではありますが、パートをできるほどに回復しました。

不思議なことに、叩いたことを肯定されたことで「もう絶対叩かない」と本気で思ったのです。



最近になって、精神科に勤めている知人に前の主治医の愚痴をちらっと話しました。


知人は言いました。



「過去は変えられないっていうのは事実だよね。何がだめ?」



過去は変えられないから今を生きるべき。

これは正論です。

前の主治医も知人も間違ったことは言ってない。


でも正しいことを言って、人を救えるかといえば必ずしもそうではないと思います。


今の主治医は「子供を叩くなんて、君はなんてことをしたんだ!」と言うより「叩くこともあるよね。君は悪くない!」と言ったほうが、私の回復に繋がると判断したのだと思うのです。


正論で詰めることだけが正解とは言えない。


これって心の傷をケアする上で、重要なことなのかなと思った出来事でした。